葦田不見(Ashida Mizu)

詩をかきます。言葉をつむぎます。エッセイとか日記とか。

コイヲイタス

忘れられぬ、ある夜の話。

恋を致すと書いて、コイタスといいます。



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「致恋」


孤独者と孤独者が互いの傷を慰めあう夜であった。

他者との破れ目、その凹凸を舐め、撫で、「何故?」って。


二匹の狼は、雨の中濡れながら雨避けを探した。

一匹目の既に閉じきった傷が一瞬開き、一瞬開いたちょうどその部分にその分だけもう一匹が溶け込み、はたまた二匹目が閉じきった傷を少し開くと、一匹目がそこに溶け込むといったことを何十分、何時間と繰り返していた。

そんなことを繰り返しているうちに、だんだん輪郭が消えていって、傷が一つになって、磨耗して、凸凹もなくなって、毛が抜けて、裸の狼になってしまった。


一匹はひたすらにもう一匹をひたすらに噛んだ。
痛みも噛む悦びも二匹だけのもの。
一匹はまたもう一匹を優しくくすぐった。
くすぐったさも表面をなぞる感覚も二匹だけのもの。

いや、元二匹のもの。今は一匹のもの。
もう孤独ではない。


もう…。


もう……。





あぁ、日が昇る。
太陽はいつも残酷で、輪郭を丁寧すぎるほどになぞりあげる。地平線が二者を別つ。空と海。白日は混ざることを許さない。許さない。


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